● ポリリズム ●
ポリリズムとは、例えば同じ1小節タイム中に4拍と3拍が同時平行で進行するような複数同時進行リズムをいいます。アフリカ起源のビートに含まれる2拍と3拍の同時進行フレーズが広く知られていると思います。 多人数アンサンブルで行われるアフリカ現地のものは伝承と本能で生み出されているように思うので、果たしてそれが数学的な符割をどこまで意識しているのか私には判りません。現代のポピュラー音楽はアフリカに拘ることなくグルーピングのアイデアをもとに発展させた種々のリズムトリックを取り入れています。 ■ ポリリズムの骨格● 2と3の同時進行ある1周期内で「周期を2分割したアクセント配置」と「周期を3分割したアクセント配置」の2種が同時進行する状態がポリリズムの基本形になります。
これを基にして「3」をハーフタイム、又は「2」をダブルタイムにすれば「4分割と3分割の同時進行」です。
上例の考え方は実際の演奏でも随所で使用されます。代表格はアフロキューバン系6/8です。 6/8 Afro-Cuban FunkStep表記 【4/4拍子、1step=3連8分音符】 〔●=Accent/○=Non Accent/◎=Ghost/_=Rest〕
上部がダブルパラディドルになっている比較的シンプルなものです。上部刻み6とHH等4の同時進行です。 アフリカ現地色の濃いものの場合になると、より均等12拍割を意識させるアフロクラーベ 【アフロキューバン6/8クラーベ】 : |●_●__●_●_●__| を骨格としたリズムで基本が組み立てられ、その奥側で均等4分パルス4拍も同時に意識されている状態に聴こえます。上例後半小節のよりポリな感じが6/8アフロキューバンの本質に近いと思います。 ※呼称について:単に「アフロ」といえばエルビンジョーンズで流行したパターンを連想しがちですが、アフロキューバン=4-6ポリリズム (Afro Poly) のなのではなく、イーブンなものも含めた中米&アフリカのクラーベ起源リズム全般の総称を「アフロキューバン」と呼んでいるようです。 参考曲
● 2と3よりもさらに複雑なポリリズム上記の「2と3」をベースに発展させたその倍数どうし組み合わせがポリリズム応用においてはほとんどだと言っていいと思います。次の段階で考えられるのは「4と5の同時進行」ですが使われる機会はまず無いでしょう。
ポリリズムの意味するところは、曲を支配するフィールどうしの複数同時進行です。ピンポイントで出現する「○○拍○○連符」はポリリズムのニュアンスを含んではいますが、曲を通して演奏されているわけではないので純粋なポリリズム呼称には当てはまらないと思います。 ● ポリリズム使用時のポイント
● ポリリズム的トリックへのアプローチ方法ポリリズム応用のベースとなる考え方を簡単ですがまとめてみました。 12/8や3/4などの「2と3の公倍数系細分化パルスをもつフィール」を前提とし、下記では24 Step表記にしています。この中で倍々ゲーム的細分化を行ってみます。
このパルスをガイドとし、さらにグルーピング分割を交えてフレーズ化します。手順を逆に辿る見方をすれば連符分割グルーピングの指標としても使えるでしょう。 ● ポリリズムの練習法予備的練習として2と3の同時進行、4と3の同時進行を左右に振り分け、手足に振り分け、でやり込んでおくといいでしょう。実践では単純な同時進行フレーズがそのまま出てくるわけではないので、色々な曲を聴き込んで耳も鍛えておきましょう。 ■ 使用例● スローテンポ 6/8 R&B系での例本来は3パルスまとまりで進行するHH刻みを2パルスでグルーピングするトリックがあります。 Step表記 【4/4拍子、1step=3連8分音符】 〔●=Accent/○=Non Accent/◎=Ghost/_=Rest〕
上記の前半小節は3Stepまとまりで進む通常のパターン、後半はHHのみを2Stepグルーピングにしたトリックです。またこの例後半のHHアクセントを逆転、3連8分音符2分割の細分化ノートも加えてみます。 Step表記 【4/4拍子、1step=1拍6連(=24分)音符】 〔●=Accent/○=Non Accent/_=Rest〕
● エイトビートの2拍3連系フィル簡単なところではRockでみられる2拍3連系フィルも捉え方によってはポリリズム応用と考えていいかもしれません。こういう感じはリンゴスターによく聴かれます。が、一時的部分的なフレーズのトリックなので純然たるポリリズムとは呼べないでしょう。 Step表記 【4/4拍子、1step=3連16分音符】 〔●=Accent/○=Non Accent/_=Rest〕
● Swing系の定番フィル1小節4拍に対し1小節を3つにグルーピングさせる定番フィルがあります。これは同時に3stepx4として流れるミクロな支配的サブディビジョン(細分化)に対し4拍グルーピング(4stepx3)をカウンターさせるトリックを内包します。なお、これもフレーズ単位の例なので純然たるポリリズムとは呼べませんが演奏するにはポリリズム的感覚が必要です。 Step表記 【4/4拍子、1step=3連8分音符】 〔●=Accent/○=Non Accent/_=Rest〕
●と■に着目して「4分音符4つ VS 4拍3連音符3つ」の「4拍に対し3が同時進行」です。 ミクロ的な細分化部分のほうに注目すると、3基調サブディビジョンで進むなかにイーブン8分音符やイーブン16分音符SDオカズをカウンターさせることも頻繁に行われています。下記ガイドパルス表記で判るように2と3の同時進行が内包されています。 Swing イーブン8分フィル、Step表記 【4/4拍子、1step=1拍12連音符(=3連32分音符)】 〔●=Accent/○=Non Accent/_=Rest〕
Swing イーブン16分フィル、Step表記 【4/4拍子、1step=1拍12連音符(=3連32分音符)】 〔●=Accent/○=Non Accent/_=Rest〕
↓ガイドパルス
このような一瞬テンポが狂ったと思わせるトリックは聴衆の耳を惹きつける強力な武器となります。1小節まるまるオカズとなったり元の細分化パルスをアウトしたりします。リズム同時進行の感覚を保って、途中で見失わないようにしましょう。 |
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