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グルーピング術の基礎

2003-8 , 2008-7-12更新

§ ▼偶数系フィール編奇数系フィール編メトリックモジュレーション

メロディーなどをリズムの視点から音楽的に聴かせるための初歩的なアプローチとして、偶数まとまりで進むビートの流れの中での奇数グルーピング、またはその逆に奇数まとまりの中の偶数グルーピングのフレーズがよく使われています。よくあるものは3つ割りや5つ割りなどで、大雑把にいうと連符の3つごとや5つごとにアクセントを置くなどした連続フレーズのことです。この具体音形は「○○つ割りフレーズ」「○○拍フレーズ」などと一般に呼ばれているようですが、このコンセプト自体を知らなくても音楽においてはごくあたりまえにみられる表現なので幾つかはすでに耳に馴染んでいることだと思います。

■ §1. 偶数系フィール編

§§ ▼グルーピングとはグルーピングの各例実際に応用される代表的なフレーズ

● 1-1. グルーピングとは

いきなり具体例からいってみます。まず、エイトビートや16などの偶数系ビート(フィール)中での奇数割りフレーズです。曲中で「キメ」などと呼ばれるTuttiで頻繁にみられるものが、下記の感じの16分の3拍フレーズ(連続16分パルスを3つごとにグルーピングしたフレーズ)です。

Step Score : Tutti exp1
▼ 【4/4拍子、1step=16分音符】 〔●=Accent/○=Non Accent/◎=Ghost/_=Rest〕

右手 CC
左手 SD (Flam=■)
右足 BD
左足 HH pedal
|●__●__●__●______|
|__◎__◎__◎___■___|
|●__●__●__●_○____|
|○_○_○_○_○_○_○_○_|

老婆心で敢えて説明しておくと、上記は16分音符3つのグルーピング単位を4回繰り返したのちの小節4拍目アタマのフラムでオトシマエ、です。この例などは様々な楽曲で日頃からよく耳にしていると思います。3拍グルーピングの歌い方は頻繁に使うので最低2小節ブチ抜き程度は数えなくとも歌えるよう練習しておきましょう。

● 1-2. グルーピングの各例

■3拍フレーズ

Step Score : 8分系3拍
▼ 【4/4拍子、1step=8分音符】 〔●=Accent/○=Non Accent〕

|●○○●○○●○|○●○○●○○●|…

Step Score : 16分系3拍
▼ 【4/4拍子、1step=16分音符】 〔●=Accent/○=Non Accent〕

|●○○●○○●○○●○○●○○●|○○●○○●○○●○○●○○●○|…

よく手軽な初期の練習法として「タバタ タバタ …」などといった馴染みの言葉に置き換えたアーティキュレーション(唄い方)が行われています。ちなみに私は駅名派でして、5拍なら「池袋」7拍は「赤坂見附」とかで最初はよく練習したものです。しかし最終的にアーティキュレーションの語感が実戦では障害になるのでこれにこだわり過ぎてもいけません。また慣れてくればいちいち言葉で歌わなくても自然にこのタイム感が沸き上がってくることだと思います。このへんもやはり自由に歌えるようにさえなればこっちのものですので恐れずに取り組んでみて下さい。

■5拍、7拍フレーズ

Step Score : 16分系5拍
▼ 【4/4拍子、1step=16分音符】 〔●=Accent/○=Non Accent〕

|●○○○○●○○○○●○○○○●|○○○○●○○○○●○○○○●○|…

Step Score : 16分系7拍
▼ 【4/4拍子、1step=16分音符】 〔●=Accent/○=Non Accent〕

|●○○○○○○●○○○○○○●○|○○○○○●○○○○○○●○○○|…

5拍7拍になると複雑なので例えば「R l r l l R l r l l …」「R l r l r r l R l r l r r l …」などのパラディドル応用系に当てはめると易しいかも知れません。アクセントをフラムにして練習するのも効果的です。3拍ならフラムアクセントやスイスアーミートリプレットまんまが適用できます。さらに実戦ではアクセント位置が常に小節アタマにあるわけではないのでフレキシブルに対応できるようスリップ位置スタートのバリエーションも練習しておきましょう。また練習時にはBDやHH pedalで8分4分などの基底パルスをキープで刻んでおくとポリリズム的、4Way的トレーニングにもなります。

● 1-3. 実際に応用される代表的なフレーズ

実戦で使える代表的なフレーズのうちごく初歩的なものを挙げておきます。

Step Score : 16分系3拍割 、スイスアーミートリプレットフィル
▼ 【4/4拍子、1step=16分音符】 〔●=Accent/○=Non Accent/◎=Ghost/_=Rest〕

HighTT (Flam=■)
LowTT (Flam=■)
FT
SD (Flam=■)
BD
HH pedal
|____■○○◎_○______|
|_______●○_■○○◎__|
|_____________●○○|
|_■○○____________|
|●_______________|
|__○___○___○___○_|

Step Score : 16分系3拍(6拍)割 、Rock的コンビネーションフィル
▼ 【4/4拍子、1step=16分音符】 〔●=Accent/○=Non Accent/◎=Ghost/_=Rest〕

TT
SD (Flam=■) 
BD
HH pedal
|__○○____○○______|
|●○____●○____■___|
|____○○____○○____|
|○___○___○___○___|

Step Score : 16分系5拍割 、フラム系フィル
▼ 【4/4拍子、1step=16分音符】 〔●=Accent/○=Non Accent/◎=Ghost/_=Rest〕

HighTT (Flam=■)
LowTT (Flam=■)
FT (Flam=■)
SD
BD
HH pedal
|■_○●____________|
|_____■_○●_______|
|__________■_○●__|
|_______________○|
|________________|
|__○___○___○___○_|

■ §2. 奇数系フィール編

§§ ▼スウィング、シャッフル中の偶数グルーピング例ハーフタイムシャッフル中での奇数+偶数グルーピング例Airplay「Nothin' You can do About It」での例

3まとまりの繰り返しをパルスのベースにして組み立てられているビート(フィール)の中で、偶数グルーピングをする場合です。スウィング、シャッフルなどの奇数系ビート自体が細かい3拍を偶数回繰り返した形で出来上がっている場合が多いため、「偶数フィール奇数割り」に比べてこちらは1〜2小節単位(またはそれ以下)で流れの帳尻が合う例がほとんどです。したがって多くはポリリズム(複数グルーピング同時進行、解説:サイト内「ポリリズムの初歩」ページ)的フィールをも内在したアプローチになっているといえるでしょう。

● 2-1. スウィング、シャッフル中の偶数グルーピング例

もっともよく見かける例としては、4/4拍子スウィング、シャッフル系フィールでみられる4拍グルーピングが代表的だと思います。4/4ですから1小節、「3パルス×4つの4分音符=全12パルス」に対し「4パルス×3グループ」というカウンターを仕掛けるわけです。

Step Score : 3連8分系feel中での4拍グルーピング
▼ 【4/4拍子、1step=3連8分音符】 〔●=Accent/○=Non Accent〕

カウンター
4分フィール
|●○○○●○○○●○○○|…
|●○○●○○●○○●○○|…

具体例ではJazzの定番フィルである以下のようなものがポピュラーでしょう。

Swing系Jazzでよくある引っ掛けフィル

Step Score : Swing Feel、4拍割りフィル
▼ 【4/4拍子、1step=3連8分音符】 〔●=Accent/○=Non Accent/_=Rest〕

RC
SD (Flam=■)
BD
HH pedal
|●__●_○●__●_○|____________|…
|____________|■○○_■○○_■○○_|…
|____________|___○___○___○|…
|___○_____○__|___○_____○__|…

上記前半が通常パターン、後半オカズです。これに2拍グルーピングの味も交えて、

Step Score : Swing Feel、4拍&2拍割りフィル
▼ 【4/4拍子、1step=3連8分音符】 〔●=Accent/○=Non Accent/_=Rest〕

RC
SD
BD
HH pedal
|●__●_○●__●_○|____________|…
|____________|●○__●○__●○__|…
|____________|__○○__○○__○○|…
|___○_____○__|___○_____○__|…

とする場合もあります。この感じのアプローチはスローテンポ6/8R&Bバラードなどで緊張感の高い部分での局所的オカズに用いられたりもします。

● 2-2. ハーフタイムシャッフル中での奇数+偶数グルーピング例

3の細分化音価が細かいハーフタイムシャッフル(解説、サイト内「リズムパターン例」ページ)などでは8分レベルでは偶数ビートとみなすことができるので音価の大きい部分で奇数グルーピングもよく行われます。同時に細かいところでは偶数グルーピングによってトリック効果を出したりします。

Step Score : Halftime Shuffle Fill in
▼ 【4/4拍子、1step=3連16分音符】 〔●=Accent/○=Non Accent/◎=Ghost/_=Rest〕

HH
H T
M T
L T
SD
BD
HH pedal
|●_◎○_◎●_◎○_◎●_◎○_◎●_◎◆__|________________________|
|________________________|__○________○____________|
|________________________|____○________○________○○|
|________________________|______○________○________|
|______●___________●__○__|●○_◎_◎_◎_●○_◎_◎_◎_●○○○__|
|●____◎_____◎●_○__◎__○__◎|________◎________◎______|
|_____________________◆__|○__○__○__○__○__○__○__○__|

例により前半パターン、後半オカズですが、後半小節に注目してみて下さい。
まず8分音符に着目した場合 「3-3-2」 の大きいグルーピングがされています。
これを3連16分音符に着目とすれば、 「9-9-6」 です。
さらにその中でミクロなグルーピングが、
「(2-2-2)-3 + (2-2-2)-3 + 6」 のように行われていることが判ると思います。

このオカズをさらにもっとトリッキーにしたい場合は、1小節目8分8拍目のアンティシ位置から始めて、
バー越え 「9-9-9 (8分の3-3-3)」 のフィルインとすることも出来ます。

● 2-3. Airplay「Nothin' You can do About It」での例

ハーフタイムシャッフルでのより複雑なグルーピング例を挙げてみましょう。有名なデヴィッドフォスター&ジェイグレイドン「Airplay(Amazon、広告)」4曲目「Nothin' You can do About It」サビ前(time 0:55)にこのようなセクションがあります。

Step Score : 「Nothin' You can do About It」(time 0:55)
▼ 【4/4拍子、1step=3連16分音符】 〔●=Accent/○=Non Accent/◎=Ghost/_=Rest /◆=Open/⇒=音価表示〕

Tp
Guide
G-Ez
 
HH
TT..
SD
BD
HH p
●|⇒⇒○●_●__●__●__●__●__●⇒⇒○|●⇒⇒⇒_●⇒⇒○●⇒⇒⇒_●⇒⇒○●⇒⇒⇒__|
_|____________________●○○○|○○○○○●○○○○○○○○●○○○○○○○○_|
_|_____________________○__|●__○__○__●__○__○__●__○__|
 
◆|_____◆__◆__◆__◆__◆__◆___|________________________|
_|__○_____________________|______________●_○___●___|
_|___●____________________|____________●◎_◎_○●◎_◎○○|
●|_____●__●__●__●__●__●___|________________________|
◆|__○__◆○_◆○_◆○_◆○_◆○_◆__○|________________________|

じつは肝心なグルーピング部にDrumはタセットしていてまるで蚊帳の外なのですが、まあここで解説するぶんにはDrumの有無などさほど重要ではないでしょう。アンティシで始まっている後半ブラス(Tp)セクションに注目して下さい。上例で具体音形が現れていないベーシックパターンは1つ前に挙げたハーフタイムシャッフルと同じです。なお「Guide」「G-Ez」はアレンジャーが基にしたと思われるであろうグルーピングを私が勝手に類推した「Grp'n Guide (Easy)」のつもりですので念のため。

実際に聴いた感じはそれほどでないものの、1小節24ステップのハーフタイムシャッフルの上で9拍グルーピング且つフレーズのアタマは1ステップアンティシで前方にスリップさせているという複雑な符割となっています。3連16分9拍グルーピングは8分3拍グルーピングともとれます。また9拍内部で4拍と5拍に分割されていてこれがトリックに輪をかけていますが原理としては3拍と6拍分けの上でアタマ音符のみ1Stepアンティシが行われていると考えられます。実戦では「G-Ez」で示したタイムを意識すればプレイが容易になるでしょう。

「G-Ez」での●=Accentが1フレーズの骨格としてのアタマつまり、手前4Step「●⇒⇒○」がフィル部分、5Step「●⇒⇒⇒_」が本フレーズと解釈すれば理解は楽です。そのように眺めていけば後半小節まるごと内では前でも挙げた3-3-2の大きいグルーピングがなされた展開となっているのが判ると思います。


余談ですがこの演奏はあまりに難解だったのかブラスパートがヨレまくっているにも関わらず、対してジェフポーカロは完璧なタイムキープを見せつけています。上記譜例後半のオカズは彼の定番でもある変則ダブルパラディドルになっているようで、しかも個人的妄想推測だと「R l R l R L R l L r L L」というどうにも無理矢理な手順に聴こえてしまいます。やはり叩き易さよりフレーズ優先なのでしょうか。真偽のほどは諸氏聴き込んで判断してみて下さい。またこの曲はGtSolo後ブリッジサビ部から左chにレガートHHがオーバーダブされていて、コーダに突入してからは右ch⇒通常刻み、左ch⇒ダブルパラディドルというポリリズミックな味付けがされていたりします。


■ §3. メトリックモジュレーション

§§ ▼前置き:メトリックモジュレーションに至る前段階のグルーピングトリックメトリックモジュレーションDave Weckl 「Here and There」での例

メトリックモジュレーションとは、ある注目した音符の音価を絶対不変時間の基準にとり「基準とした音符の総ステップ数」を小節内で増減させるリズムチェンジの手法です。これは曲中登場する耳にキャッチーなフレーズをきっかけにして行われることも多くグルーピング術とは密接な関係があります。順を追って解説していきます。

● 3-1. 前置き:メトリックモジュレーションに至る前段階のグルーピングトリック

大音価音符のバー越えグルーピングによる強力トリック

グルーピングでは適用音符(=音価)のスケーリングによってもトリック感に差が出ます。16分などの細かい音符を3拍グルーピングする場合は全体グルーブ感に与える影響は少ないのですが、これが8分4分となるにつれ「ダウンビート、アップビートの繰り返しタイム」のスケールに近づく関係で基本ビートが崩れたような印象となります。特に4分音符単位のグルーピングはバー(小節)越えがほとんどなこともあって強力にトリッキーです。

Step Score : 4分3拍割り
▼ 【4/4拍子、1step=4分音符】 〔●=Accent/○=Non Accent〕

|●○○●|○○●○|○●○○|●○○○|…

Sting「The Lazarus Heart」での例

これの解りやすい一例を挙げると、Sting「Nothing Like the Sun(Amazon、広告)」1曲目「The Lazarus Heart」(time 2:55) でこのようなSaxフレーズに端を発した典型的なトリックプレイがみられます。

Step Score : Nothing Like the Sun「The Lazarus Heart」(time 2:55)
▼ 【4/4拍子、1step=16分音符】 〔●=Accent/○=Non Accent/_=Rest〕

HH
SD
BD
HHp
|●__◆__◆__◆__◆__◆|__◆__◆__◆__◆__◆_|_◆__◆__◆__◆__●_○|…
|___●_____●_____●|_____●_____●____|_●_____●_____●__|…
|●●____●_____●___|__●_____●_____●_|____●_____●_____|…
|___◆○_◆○_◆○_◆○_◆|○_◆○_◆○_◆○_◆○_◆○|_◆○_◆○_◆○_◆○____|…

全体が16thフィールの曲中で「16分3拍」を基準にさらに大きな「16分6拍=8分3拍」単位でBDとSDペアの1フレーズ、これが2回繰り返しで聞き慣れたシャッフル音形となり「8分6拍=4分3拍」がグルーピングされています。一見シャッフルにチェンジしてテンポも変わったように聴こえますが実は一貫した4/4拍子16分シーケンスのなかでの3小節に渡る連続3拍フレーズです。

● 3-2. メトリックモジュレーション

ここからが本題です。このようなトリックプレイ時にプレイヤー側自らがトリックに引っかかってしまったカタチのアレンジバリエーションも考えられるのはお気づきでしょう。このリズムチェンジ法が一般にメトリックモジュレーションと呼ばれている(らしい)もので、1小節タイムの枠組みを根本から変えてしまい本当にリズムチェンジをしてしまいます。当然ながら、その場合グルーピングに使用した音符ひとつ分の絶対音価はそのままで1小節の絶対タイムのほうが伸縮することになります。

これはすなわち記譜上の拍子記号が変わることを意味しています。ということは機械的な単なる拍子チェンジである、のようにも思えますが、ダウンビートアップビートの概念を含むフィール重視の理想的な表記にこだわると16thフィール4/4⇒シャッフル4/4へのチェンジもありうるのがややこしいところです。より細かい3連系音符を基準にするほど現状の表記法では不十分になります。結果シャッフル4/4=12/16と表現したりするのでこの表記の奥に潜む意味には注意が必要です。テンポ変化指定として記譜することも出来ますがグルーピングをもとに段階的にチェンジが行われることが多いため読譜のしやすさを考えると現実的ではありません。譜面を使用したセッションなどでは作者しだいでかなり異なった表記になるかもしれないことを認識しておきましょう。

反面この手法は耳レベルでの理解はごく簡単で、単純に1小節に入っている「基準とした音符のステップ数」が増減するだけのチェンジと考えておけばよいと思います。

上例「The Lazarus Heart」を仮にチェンジさせてみる

16th Feel 4/4である「The Lazarus Heart」先の上例3小節目から12/16シャッフルへメトリックモジュレーションさせる例を考えてみると、

Step Score : exp1
▼ 【4/4拍子⇒12/16拍子、1step=16分音符】 〔●=Accent/○=Non Accent/_=Rest〕

HH (Open=◆),CC
SD
BD
HH pedal
…|_◆__◆__◆__◆__●_○|●_○●_○●_○●_○|…
…|_●_____●_____●__|___●_____●__|…
…|____●_____●_____|●_____●_____|…
…|_◆○_◆○_◆○_◆○____|____________|…

単純にこうなります。3小節目でちょうどフレーズの帳尻が合っているのでそのまま次をスタートさせればよいわけです。もし先の2小節目からチェンジさせたい場合などはその小節をグルーピングの区切りを基準に伸縮、変拍子化させ8/16(=2/4)などとすればスムーズに移行できると思います。

Step Score : exp2
▼ 【8/16拍子⇒12/16拍子、1step=16分音符】 〔●=Accent/○=Non Accent/_=Rest〕

HH (Open=◆),CC
SD
BD
HH pedal
…|__◆__◆__|●_○●_○●_○●_○|…
…|_____●__|___●_____●__|…
…|__●_____|●_____●_____|…
…|○_◆○_◆○_|____________|…

● 3-3. Dave Weckl 「Here and There」での例

以上は偶数系ビート⇒奇数系のチェンジですが当然奇数系⇒偶数系も可能です。典型な一例としてDave Weckl「Master Plan(Amazon、広告)」2曲目「Here and There」を考察してみましょう。この曲の基本ビートはハーフタイムシャッフルで途中からやや8ビートが匂う16th Funk Rockフィールへとチェンジします。

Cメロベーシックパターン(time 1:36 他)

まず曲中Cメロ部冒頭(time 1:36 他)の基本パターンはこのような感じです。

Step Score : 「Here and There」 Cメロ
▼ 【24/16拍子、1step=16分音符】 〔●=Accent/○=Non Accent/◎=Ghost/_=Rest/⇒=音価表示〕

Melody
Bass
 
HH,RC,CC
TT etc
SD
BD
HH pedal
…○○●|⇒●⇒●⇒●⇒⇒⇒○○●⇒●⇒●⇒●⇒⇒⇒__●|⇒…
…○○●|⇒⇒⇒⇒⇒○⇒⇒⇒○○●⇒⇒⇒⇒⇒○⇒⇒⇒__●|⇒…
 
…__◆|_○_○_○_○___◆_○_○_○_○___◆|_…
…○○_|_________○○__________○○_|_…
…___|______●_◎_________●_◎___|_…
…__●|_____○_____●_____○_____●|_…
…___|________________________|_…

すでにメロディがアンティシ且つ2拍割り、Bassがアンティシ且つ6拍割りのトリッキーなスリップフレーズとなっているのに注意。SDアクセント位置が2,4バックビートです。これは本来4/4ととった方が解りやすいのですがここではステップ数の混乱を避けるため敢えて24/16表記にしました。数回現れるこのパターンが派生することでチェンジ部セクションとなって16フィールDメロ(time 1:54 & 3:31)に繋がっていきます。曲中1コーラス目チェンジ部(time 1:50)はブレイクを挟んで複雑ですので、より理解しやすい2コーラス目のメトリックモジュレーション部分(time 3:27)を示してみます。

2コーラス目メトリックモジュレーション部分(time 3:27)

Step Score : 「Here and There」 (time 3:27)
▼ 【24/16変形23/16拍子⇒16/16(=4/4)拍子、1step=16分音符】 〔●=Accent/○=Non Accent/◎=Ghost/_=Rest/⇒=音価表示〕

Melody
Bass
 
HH,RC,CC
TT etc
SD
BD
HH pedal
…○○●|⇒●⇒●⇒●⇒⇒⇒○○●⇒●⇒●⇒●⇒⇒⇒__|●_______________|…
…○○●|⇒⇒⇒○⇒⇒⇒●⇒⇒⇒○⇒⇒⇒●⇒⇒⇒○⇒⇒⇒|●_○_●_○_●_○_●_○○|…
 
…__◆|___◆___◆___◆___◆___◆___|◆___◆___○___○___|…
…○○_|_____○_________________|________________|…
…___|___●__○____●__○____●_○○|____●_______●___|…
…__●|_______●_______●_______|●__○____●_●_____|…
…___|_______________________|__○___○___○___○_|…

メロディの符割りは変化しないまま、Bassが6拍(=4分1拍)グルーピングだったものから4拍(4分2拍3連系)グルーピングへとアクセント位置を移動させています。これに呼応するようにDrumはダウン,アップビートと錯覚するBD,SDを乗せることでチェンジの伏線を匂わせ、アクセントをアンティシからオンビート位置にすり替えてしまい小節を23/16で終わらせています。その後、次小節では同サイズの「ダウン,アップビートのBD,SD」が繰り返され16/16=4/4となり本格的に16Funkフィールに移行させているのが判ると思います。

メトリックモジュレーションすると見せかけてチェンジしない部(time 5:04)

さらに面白いのは曲のコーダ部でこれと類似のC'メロが繰り返される部分(time 5:04)において「メトリックモジュレーションすると見せかけてチェンジしない」というトリックも行われています。譜割りはこうです。

Step Score : 「Here and There」 (time 5:04)
▼ 【24/16拍子、1step=16分音符】 〔●=Accent/○=Non Accent/◎=Ghost/_=Rest/⇒=音価表示〕

Melody
Bass
 
HH,RC,CC
TT etc
SD
BD
HH pedal
…○○●|⇒●⇒●⇒●⇒⇒⇒○○●⇒●⇒●⇒●⇒⇒⇒○○●|⇒…
…__●|⇒⇒⇒○⇒⇒⇒●⇒⇒⇒○⇒⇒⇒●⇒⇒⇒○⇒⇒⇒●|⇒…
 
…__◆|_○_○_○_○___○_○_○_○_○___◆|_…
…○○_|_____________________○○_|_…
…___|______●___________●_____|_…
…__●|_____○___●__●__○_______●|_…
…___|___○_____○__○__○________|_…

これなどはベースラインが16分4拍グルーピングでマクロな「4と3交錯」なうえに「すべて1Stepアンティシ」しているというポリリズム的、スリップビート的にもひじょうに興味深い、まさに耳感覚的コピーのし甲斐があるフレーズといえるでしょう。

「16thからシャッフルへの戻り」メトリックモジュレーション部分(time 2:24)

ついでにこの曲でのリズムの「戻り」部分のメトリックモジュレーション(time 2:24)も挙げておきます。

Step Score : 「Here and There」 (time 2:24)
▼ 【16/16(=4/4)拍子⇒8/16(=2/4)拍子⇒6/16拍子⇒24/16拍子、1step=16分音符】

 〔●=Accent/○=Non Accent/◎=Ghost/_=Rest/⇒=音価表示/※「☆☆」=2拍3連16分音符3個〕

Melody
Bass
 
HH,RC,CC
TT etc
SD
BD
HH pedal
…○○○●|⇒⇒○⇒⇒○⇒___●⇒⇒○⇒⇒|○⇒⇒○⇒___|●⇒⇒○⇒⇒|●⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒…
…___●|⇒⇒○⇒⇒○⇒___●⇒⇒○⇒⇒|○⇒⇒○⇒___|●⇒⇒○⇒⇒|●⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒◎◎…
 
…___◆|__○__○____◆__◆__|◆_______|◆__◆__|◆__◆_____◆__…
…____|________________|______☆☆|______|____________…
…____|_◎__●_◎◎○○__●___|__☆☆☆☆__|______|______●_____…
…___●|__○__○____●__○__|○_______|●__●__|●___________…
…____|________________|________|______|___◆__○__◆__…

これもアンティシとグルーピングを上手く活用したメロが印象的です。チェンジの変わり目は8/16(=2/4)拍子⇒6/16拍子の部分で、6/16拍子部ではそれまでのTuttiに絡めた16分3拍フレーズをオンビートに用いチェンジ後の4分音符2つに仕立てることで回帰を促しています。この部分の8/16+6/16で変形1小節と捉えることもでき、そうすると前半2拍がチェンジ前音価(=4Step)のダウン,アップビート、後半2拍がチェンジ後音価(=3Step)のダウン,アップビートの組み合わせとみなしたトリックにも聴こえます。大きな流れとして続く「ダウン,アップ,ダウン,アップでひとまとまり」だという聴き手が無意識レベルで思いこんでいる小節線に反抗することのないアプローチです。ちなみにこの8/16部分は一気に6/16として処理するバリエーションもアリでしょう。


以上のようにメトリックモジュレーションはその大袈裟な語感からくるイメージほどには難しいものでなく耳での理解は簡単だと思います。気の利いた音楽的フレーズを解析したら結果として数学的に美しい並びとなっていた、ぐらいの理屈だといえます。言葉で解説しようとすると適当な日本語と楽理表記がないのでどうしてもややこしくなりがちなのですが、前述したようにある音符の音価を絶対不変の基準にとっただけのただのリズムチェンジです。


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