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スティックとグリップ

2003-5 , 2017-3-28更新

§ ▼スティック各部名称特殊なスティックスティックの握り方

ドラム演奏のためのスティック(ばち)についての解説です。

■ スティック各部名称

図、スティック各部名称

● ボディ部分の素材と形状

素材は通常木製で、ヒッコリー、オーク、メイプルがほとんどです。ごく一部にファイバーやアルミのものもありますが、実際に好まれて使われているものはほとんどが木製の製品です。

ヒッコリー

最もポピュラーで中庸。3素材中では中間の重さで材はしなりのある印象です。コントロール性も優等生的ですが柔らかさがあるため消耗が比較的早くなります。ジワジワと折れてくるので演奏中でも完全に折れる時期を察知することができます。

オーク(樫)

硬く重く耐久性は高めです。重量があるためにパワーヒットには向きますが繊細なプレイはやや辛いでしょう。ある日突然前ぶれなしに折れるので演奏中の注意が必要です。

メイプル

硬く軽く、繊細なプレイに追従してくれます。折れやすいのが難点で、3素材中耐久性は最も低いと思われます。パワーヒットには向かないでしょう。

太さの標準は14〜15mmで13.5〜16mmの間のモデルがほとんどです。長さは400mmに前後して380〜420mmというところでしょうか。図に示した形状以外には、非常に特殊なものに両端が柄の形状である単なる棒状のもの(代表格はイアンペイスモデル)、両端にショルダーとチップが付いたモデルなどもあります。

● チップ

楽器をヒットするのに最も多く使う部分です。形状はボール(丸)形、ティアドロップ(涙滴)形、三角形や俵形などがあります。チップ形状は出音に大きく影響し、特にシンバルのピングサウンドでは顕著な違いが出ます。ボール形はややこもった柔らかい感じで反対にティアドロップは粒立ちがはっきりした音となります。またチップ部分のみ素材が違うモデルもありナイロンチップのモデルなどが存在します。

● ショルダー

シンバルでクラッシュサウンドを得る場合によく用いられるテーパー部です。形状の差異による音への影響はほとんどありませんが、スティックの重心バランスに若干影響します。重心の違いなどは握り位置調整で吸収すれば良いのでさほど気にする必要も無いでしょう。

● 製品について

価格は\1,000〜\1,500程度のモデルが一般的で、アーティスト仕様シグネチャーモデルは若干高価格です。メーカー品であれば素材の価値にほぼ比例した値段設定がされていると思います。自分に合うものが見つかるまではどのモデルを買うか悩むところですが、最初のうちはパール社110H(旧ジェフポーカロモデル)などの平凡で中庸なモデルから試してみることをお薦めします。スティックは消耗品で、後々様々なモデルを買って試すことになるので変な癖を付けないためにも初期は基本重視がいいと思います。

個体差的なチェックは反りがないことと、いかにもすぐ割れそうな木目がないか、だけで十分でしょう。売り場には重量をチェックする秤が置いてあったりしますが、製品の僅かな左右重量バラつきなどは演奏上まず問題にならないはずです。


■ 特殊なスティック

通常タイプのスティック以外に良く用いられるものです。

● ブラシ(ワイヤブラシ、ナイロンブラシ)

柄の先が多数のワイヤなどで平らなほうき状になった特殊スティックです。Jazz系のプレイでよく用いられ、これでヘッド上を掃くスウィープ奏法という特殊な奏法があります。材質によりワイヤブラシかナイロンブラシがありブラシとしての正統はワイヤブラシです。音の繊細さではワイヤ製に軍配が上がりますが、ワイヤは1本1本がすぐ曲がってしまいヘタりが早いという欠点もあります。

● マレット

ヴィブラホンやティンパニ、大太鼓で用いられるタイプの先がフェルトの球状になっているばちです。特にドラムセット用の特別なものではありません。滑らかなシンバルロールや柔らかいドラムサウンドが欲しいときに使います。スティックに比べ若干高価ですがスティックケースに一組忍ばせておくと重宝します。

● ブラスティック、ロッド

ブラシとスティックのあいのこのようなスティックです。10本程度の太めの「ひご」を束ねて一つにしてある変わり種で、ひごの本数や材質、太さなどバリエーションや製品ネーミングも様々です。比較的新しいアイテムでこれは楽器メーカーによる企画物の感が強いです。抜けた音は出しにくいですがそれでも最近は結構みかけるようになりました。サウンドもブラシとスティックの中間を狙ったもので奏法としてはスティックとほぼ同じようにして用います。なおスウィープは当然ながらできません。


■ スティックの握り方

基本的なグリップ(握り方)についてです。
グリップには大別してマッチドグリップ、レギュラーグリップの2種があります。

図、マッチドとレギュラー2種のグリップ 図、マッチド3種とレギュラー

● マッチドグリップ

左右同じ持ち方をするグリップです。人差し指と親指で挟んだ部分をおおまかな支点とし、残りの指はスティックに常に沿わせるように軽く添えます。この「残りの指」や「手のひら」も含めた全部が重要な役割を担い、手と腕全体でストローク動作を行うことになるのでむやみに支点を意識し過ぎないようにしましょう。人差し指と親指には力はほとんど入っていない状態になります。さらに同じマッチドでも手首の甲の向け方で呼び方に違いがあります。

■ フレンチグリップ

打面に対し親指を上方に向けます。ティンパニ演奏でよく用いられます。親指でのリバウンドコントロールがより容易になります。

■ ジャーマングリップ

甲の部分を上に向けます。中、薬、小指の3指でのコントロールに重きを置くタイプです。

■ 中間のグリップ

フレンチとジャーマンの中間的な持ち方です。比較的ポピュラーです。アメリカングリップとも呼ぶようです。

● レギュラーグリップ

マーチングバンドの演奏から受け継がれて来たスタイルです。左手が特殊な持ち方をします。これはふつうに正しく「箸」を持ったときの上側の一本を除いた状態とほぼ同じになります (当然「左手で」) 。 支点は親指と人差し指の付け根部分、細かい方向のコントロールは中指と薬指に軽く挟んだ部分を使いショットには手首の回転も利用します。マッチドよりは挟んだ部分を支点とする意識は強いですが、それでもなお「ストローク腕全体」の基本は変わらずトータルな支点位置は空中をフロートしているイメージです。右手側はマッチドと同様にグリップします。

Jazz畑ではレギュラー、Rockではマッチドが多いようですが、違いによる有利不利の差は事実上無いと思います。あるとすれば気分的、心理的な差ぐらいでしょうか。修得する上ではレギュラーがやや難易度が高いかもしれません。私は特に理由はなく9割方マッチドを使っています。

● 扱い方

グリップする部分は、スティック自体の重心の位置にもよりますが柄側の端から約1/3程度のあたりが一般的です。しかし個人差も大きく端ギリギリを持っている人もいます。自分にとって最もやりやすい位置でよいでしょう。また求めるサウンドや気分によってグリップスタイルや握り位置を変えることは演奏中頻繁にあります。1曲演奏する中でもジャーマンとフレンチまたその中間なりを無意識で使い分けたりしているのが実際といった感じです。

ショットは、肩、肘、手首、指のすべてを使います。特に中指、薬指、小指の三本の使い方は重要で、常にスティックに追従するようにして用います。跳ね返りを殺さず次の動作に無理なくつなげられるようにします。バスケのドリブルに近いかもしれません。

きれいで迫力があり抜ける音を出すためにはショットのスピードが重要です。力や重量に頼ると汚い耳障りな音になり他楽器の音を邪魔します。遠達力もないため自分の音も埋もれてしまいます。

私はドラミングの迫力は音量そのものより、各音の音量差にあると考えます。出せる音量の最大値は各ドラム個体により決まっていますし、鳴りの美味しいポイントは限られた範囲内にあります。ピアニシモ側にコントロールの幅を広げ、ここ一発のためにプレイ全体を見通して強弱を制御する感じです。


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