● スティック各部名称

■ ボディ部分の素材と形状
素材は通常木製で、ヒッコリー、オーク、メイプルがほとんどです。ごく一部にファイバーやアルミのものもありますが、実際に好まれて使われているものはほとんどが木製の製品です。
- ヒッコリー
- 最もポピュラーで中庸。3素材の中では中間の重さで材はしなりのある印象です。コントロール性も優等生的ですが柔らかさがあるため消耗が比較的早くなります。ただしジワジワと折れてくるので演奏中でも完全に折れる時期を察知することができます。
- オーク(樫)
- 硬く重いので耐久性は割と高いです。重量があるためにパワーヒットには向きますが繊細なプレイはやや辛くなるでしょう。丈夫ですが、ある日突然前ぶれなしに折れるので演奏中の注意が必要です。
- メイプル
- 硬いうえに軽く、繊細且つキレのあるプレイによく追従してくれます。しかしひじょうに折れやすいのが難点で、3素材中耐久性は最も低いと思われます。Rock系には向かないと言わざるを得ません。
太さの標準は14〜15mmで13.5〜16mmの間のモデルがほとんどです。長さは400mmに前後して380〜420mmといったところでしょうか。図に示した形状以外には、非常に特殊なものに両端が柄の形状である単なる棒状のもの(代表格はイアンペイスモデル)、また両端にショルダーとチップが付いた怪しいモデルなどもあります。
■ チップ
楽器をヒットするのに最も多く使う部分です。形状も多様でボール(丸)形、ティアドロップ(涙滴)形、三角形や俵形などがあります。この部分の形状は出音に大きく影響し、特にシンバルのピングサウンドでは顕著な違いが出ます。ボール形はややこもった柔らかい感じで反対にドロップは粒立ちがはっきりした音となる傾向にあります。美しいピング音を得たければティアドロップ系が最強になります。またチップ部分のみ素材が違うモデルもありナイロンチップなどが存在します。
■ ショルダー
シンバルでクラッシュサウンドを得る場合によく用いられるテーパー部です。形状による音への影響はほとんどありませんが、ここはスティックの重心バランスを決定する要素ともなっています。しかし実際の演奏に関わる重心位置はグリップする位置によって相対的に変えられる(現実にはスティックのみを振るのではなく腕や手と一体化した状態での全体重心が出来ている)ためショルダー形状による差異は大した問題ではありません。
■ 購入時の参考
価格は\1,000〜\1,500程度のモデルが一般的です。シグネチャーモデルといってそれぞれのアーティスト仕様は若干高価格。メーカー品であれば素材の価値にほぼ比例した値段設定がされていると思います。自分に合うものが見つかるまではどのモデルを買うか悩むところですが、最初のうちはパール社110H(旧ジェフポーカロモデル)などの平凡で中庸なモデルから試してみることをお薦めします。所詮スティックは消耗品で、結局様々なモデルを買って試すことになるので変な癖を付けないためにも初期は基本を重視する姿勢がいいと思います。
個体差的なチェックは反りがないことと、いかにもすぐ割れそうな木目がないか、だけで十分でしょう。売り場には重量をチェックする秤が置いてあったりしますが、製品の僅かな左右重量バラつきなどは演奏上まず問題にならないはずです。数字に頼るより実際に手で持ってみてしっくりくるかどうかの感覚を優先しましょう。
※参考≫
ドラムショップGateway 「スティック」の商品ページ、
モリタ楽器サイト内、「Sticks Mallets Burushes」の商品ページ(各種スティック種類、スペック表)
● 特殊なスティック
通常タイプのスティック以外に良く用いられるものです。それぞれに追求すれば深いですが、ドラムセットにおけるスティッキングの主テクニックからいえばサブな扱いなのでここではサワリ部分のみ説明しておきます。
- ブラシ(ワイヤブラシ、ナイロンブラシ)
柄の先が多数のワイヤなどで平らなほうき状になった特殊スティックです。Jazz系のプレイでよく用いられ、これでヘッド上を掃くスウィープ奏法という特殊な奏法があります。材質によりワイヤブラシかナイロンブラシがありブラシとしての正統はワイヤブラシです。音の繊細さではワイヤ製に軍配が上がりますが、1本1本がすぐ曲がってしまいヘタりが早いという欠点もあります。ブラシはその奏法だけでも非常に奥が深く簡単には説明しきれないためここでは割愛します。 ≫ やや詳しい解説は「独特なテクニック」ページ参照
- マレット
ヴィブラホンやティンパニ、大太鼓で用いられるタイプの先がフェルトの球状になっているばちです。特にドラムセット用の特別なものではありません。滑らかなシンバルロールや柔らかいドラムサウンドが欲しいときに使用されます。スティックに比べ若干高価ですがスティックケースに一組忍ばせておくと結構重宝します。
- ブラスティック、ロッド
ブラシとスティックのあいのこのようなスティックです。10本程度の太めの「ひご」を束ねて一つにしてある変わり種です。ひごの本数や材質、太さなどバリエーションや製品ネーミングも様々。比較的新しいアイテムでこれは楽器メーカーによる企画物の感が強いです。抜けた音は出しにくいですがそれでも最近は結構みかけるようになりました。サウンドもブラシとスティックの中間を狙ったもので奏法としてはスティックとほぼ同じようにして用います。なおスウィープは当然ながらできません。
※参考≫ ドラムショップGateway 「ブラシ その他」の商品ページ
● スティックの扱い方
基本的なグリップ(握り方)についてです。
グリップには大別してマッチドグリップ、レギュラーグリップの2種があります。

■ マッチドグリップ
左右同じ持ち方をするグリップです。人差し指と親指で挟んだ部分をおおまかな支点とし、残りの指はスティックに常に沿わせるように軽く添えます。コントロールにはこの「残りの指」や「手のひら」のほうが重要な役割を担い、手や指を含む腕全体がストローク動作を行うことになるのでむやみに「支点」を意識し過ぎないのがコツです。人差し指と親指にはチカラはほとんど入っていない状態が一般的なハズです。さらに同じマッチドでも手首の甲の向け方で呼び方に違いがあります。
- ・フレンチグリップ
打面に対し親指を上方に向けます。ティンパニ演奏でよく用いられるグリップです。親指でのリバウンドコントロールがより容易になります。
- ・ジャーマングリップ
甲の部分を上に向けます。中、薬、小指の3指でのコントロールに重きを置くタイプです。
- ・中間のグリップ
フレンチとジャーマンの中間的な持ち方です。比較的ポピュラーです。アメリカングリップとも呼ぶようです。
■ レギュラーグリップ
マーチングバンドの演奏から受け継がれて来たスタイルです。左手が特殊な持ち方をします。これはふつうに正しく「箸」を持ったときの上側の一本を除いた状態とほぼ同じになります。(当然「左手で」ですが…) 支点は親指と人差し指の付け根部分、細かい方向のコントロールは中指と薬指に軽く挟んだ部分を使いショットには手首の回転も利用します。マッチドよりは挟んだ部分を支点とする意識は強いですが、それでもなお「ストローク腕全体」の基本は変わらずトータルな支点位置は空中をフロートしているイメージです。このストローク感覚はマッチドでもレギュラーでもまったく同じです。なお右手側はマッチドと同様にグリップします。
■ グリップの違いによる影響は?
Jazz畑ではレギュラー、Rockではマッチドが多いようですが、持ち方の違いによる優劣や有利性の差は事実上まったく無いでしょう。あるとすれば気分的、心理的な差ぐらいです。修得する上ではレギュラーがやや難易度が高いかもしれません。が、それもおそらく「難しそう」という先入観からくる諦め度の個人差が練習量に表れてきている程度のものでしょう。
グリップする部分は、スティック自体の重心の位置にもよりますが柄側の端から約1/3程度のあたりが一般的です。しかし個人差も大きく端ギリギリを持っている人もいます。自分にとって最もやりやすい位置でよいでしょう。また求めるサウンドや気分によってグリップスタイルや位置を変えることは演奏中頻繁にあります。1曲演奏する中でもすべてのグリップ種を自然に無意識で使い分けているのが実際といった感じです。
● Webmasterの私的見解
私自身の個人的見解を述べてみましょう。私は特に理由はないですがほとんどの場合マッチドを使っています。以下はごく当たり前のことですが、ショットする上での肝は「如何にリバウンドをコントロールするか」ですので、そのために肩、肘、手首、指のすべてを自然な感じに使います。特に中指、薬指、小指の三本の使い方は重要で、常にスティックに追従するようにして用います。跳ね返りを殺さないよう、且つ次のアクションにつなげられるようバネの効いた制御が重要です。ちょうどバスケのドリブルをイメージしていただければ分かり易いと思います。
また美しく抜けた音のためにはショットのスピードが重要です。私の場合スティックは軽めで細めのもの(よくある規格でいえば「7H」など)を使い、そのウエイトに頼らず音を出すよう心がけています。遠くにとどく迫力のある音量を出すためにはどうしてもスピードで攻めなければなりません。音量を稼ぐために重量、すなわち力に頼るとどうしても汚い耳障りな音になり他楽器の音を強力に邪魔します。そのくせ遠達力もないため結局は埋もれてわかりづらい音になってしまいます。まさに悪循環です。
私はドラミングに於いての迫力は音量そのものより、各音の音量差にあると考えています。そもそも出せる音量の最大値は各ドラム個体により決まっていますし、その中でも鳴りの美味しいポイントは限られた範囲内にあります。より迫力を増すためにはどれだけピアニシモ側にコントロールの幅を広げるかにかかっている訳です。いわゆる「ここ一発」のためにプレイ全体を見通して演奏する感じです。
スティックの種類やグリップについては、とくに勧められる基準や指標はないと思っています。ようは自分の欲しい音やフレーズを追求できればよいわけで、各人がやりやすいと感じる持ち方でよいでしょう。奏法に於いてもスティックの何処を使おうがまったくの自由ですし、事実スティックショットなど様々な奏法が編み出されています。今後技術や機材の発展に伴いいままで認知されてなかったような個性的なグリップスタイルが登場するかもしれません。